角川里の自然環境学校

農山漁村から学び育てるESD

 農山漁村(里地里山)とは、自然に対して、人が手を入れ、暮らしと生産を営むことによって、環境が維持され生態系が豊かになるという特徴を持っています。それらを支えているのが森里川海の資源にかかわる知恵や技術なのです。そしてその担い手は農山漁村に住む地域住民です。しかし今、全国の農山漁村は過疎化と少子高齢化にさらされ、それらの知恵や技術が十分に継承されないまま消えようとしています。担い手を失った里地里山では荒れ始めているところが散見されるようになってきました。何よりも地元住民自身が農山漁村の知恵や技術に ついて、あまりに日常的すぎるが故にその価値に十分気がついていないということがあります。

そこで、山形県の山村部で活動する角川里の自然環境学校(以下「里の学校」)では活動の初動段階から「地元学」を取り入れてきました。地元学とは、地元住民と外部者が一緒に地域を回って地元の調査をし、そこで得られた学びから地域の将来像を模索する市民参加型ワークショップ手法です。里の学校が活動している戸沢村角川地区では継続的にこの地元学活動を進めています。そこでは地元住民にとっては当たり前の地元のことが外部者からすると「これは何ですか?」「これは面白いですね、すごいですね」というものが次々と出てきます。こうした外部者とのコミュニケーションによって地元住民が地域ならではの知恵や技術に改めて気がつき、森里川海に根ざした活動がスタートしていくことになったのです。このワークショップの一番の成果は、地元住民が外部者の目線の違いを活用して、逆に自分たちのことを再発見したというプロセスではないかと考えます。このように地元住民自身が発案し、運営の主体となって、里山の暮らしの知恵や技術に依拠し、自然との共生をテーマに掲げる地域づくり学校である里の学校の活動プログラムが生み出されました。それは里山や農業の四季折々の仕事、年中行事や食文化等、地元では日常的に営まれていたものを基盤としたものであり、地元と外部者の交流と学びの中で新たな展開を見せようとしています。

tozawa地域ワークショップ

4年後、山村地域を越え森里川海の広域連携活動へと展開していこうとNPO法人里の自然文化共育研究所が設立されました。農山漁村それぞれの地域から学びつないでいくことで、一つの地域では解決し得ない環境課題に取り組んでいこうとしています。それは必然的に森里川海の暮らしと産業の再生と結びつくものとなっています。一例として里山保全活動で生産される木炭と、その炭を利用して行われる焼き干し等の海産物を通じた森と海の資源交換による交流の試みが挙げられます。この取り組みは新たな地域経済活動や保全活動を展開しつつあります。

tozawa無農薬のコメ作り

森里川海のつながりの再興、地域住民と外部者との連携、交流と学習による地元の知恵と技術の再発見など田舎の手作り活動によって農山漁村の持続可能な暮らしや環境が創り出されていく可能性が十分にあります。このことは日本の原風景である豊かな里地里山環境を再創出していくことを意味します。田舎の素朴な知恵や技術にこそESDをすすめるための基本的なあり方が垣間みられるのではないでしょうか。

tozawa里山整備作業

 
NPO法人里の自然文化共育研究所(角川里の自然環境学校)
住所 〒999-6403 山形県最上郡戸沢村大字角川481-1(角川事務局)
Tel&fax 0233-73-8051
URL http://www3.ocn.ne.jp/~satoweb/

出典: 2008年度 EPO東北ESDテキストブック
東北の『食と暮らし』をかんがえる 地域づくりと 学びあい